前回までの記事では、「前向きに考えよう」「自分を愛そう」と頭で思っても、体がその状態になっていなければ、実際にはその感情の状態になっていないということについて書いてきた(記事リンクはこちら)。
また、その背景には、慢性的なストレスによって身体がサバイバルモード(収縮状態)に入り、交感神経優位の状態が続いてしまうことがあることも説明した(記事はこちら)。
では、その収縮状態から抜け出すには、具体的に何をすればよいのか。
私は17年間、仕事でも家庭環境でもストレスの原因となるようなことがどちらかと言えば多い環境で、クンダリーニ覚醒による変性意識状態も強弱こそあれずっと続いていた。
瞑想法、呼吸法、ボディワークを探究し、さまざまな方法を試してきた。その中で最もシンプルで、誰でもすぐに始められると感じたのが
「からだからゆるめる」こと。
それも、ピンポイントにごく小さな身体の部位にフォーカスしてゆるめること。
ここで重要なのは、「リラックスしよう」と頭で考えることではない。
身体そのものに働きかけ、収縮状態から解放状態へ、物理的に、身体的に、「切り替える」きっかけをつくること。
顔の筋肉、首、肩、骨盤はそれぞれ筋膜や深層筋によって立体的につながっており、一つのネットワークとして機能していることは、トレーニングをしている人には常識となりつつある。
その中で、いかに普段の「スマホ」と「PC」を使う姿勢と、そこに流れてくる情報への反応が、その人の筋膜・コアを緊張状態におき、硬直化させるかも、実感として分かっている人も多いだろう。
私が特に大事だと考えるのは、仙骨から背骨、後頭部を通り、眉間や顔の筋肉まで続く一本のラインである。これはつまり、ヨガでいう重要なチャクラが集まるラインで、クンダリーニのシステムにおいては「シュスムナ管」と呼ばれる。「管」なのでモノを通す回路であり、当然、そこを通るのは、クンダリーニ・エネルギーだ(クンダリーニについては、詳しくはこちらの記事をご参照ください)。
仙骨にあるのがベースチャクラ、眉間の間にあるのはいわゆる「第三の目」とされるアジュナー・チャクラで、第六感や直観力をつかさどるとされる。
眉間にしわを寄せるという動作は、単に表情が変わるだけではない。ディープ・フロント・ライン(DFL)と呼ばれる、身体の中心を深く通る筋膜の一部で、目の周り、舌を動かす筋肉、顎の筋肉とつながり、首の深層、そして胸郭、腕の付け根を通って肩周辺の筋膜へと連動している。マッサージや整体で、首と頭の境目あたりをさわられて「目が疲れてますね」と言われるのはこのDFLで目と首がつながっているからだ。
さらに、ディープ・フロント・アーム・ライン(DFAL)と呼ばれる、腕や手のひらから始まり、胸を通って首につながる筋膜層も、目の周りの筋肉(眼輪筋など)へとつながっている。
つまり、ストレス下で、サバイバルモードにある身体が「これは問題だ!」と何かを捉えて、眉間にしわを寄せると、このDFLとDFALも連動して緊張する。すると、上半身全体が緊張する。上半身にとどまらない。横隔膜が連動して緊張してしまえば、呼吸とともにやわらかく上下する横隔膜がきちんと動かなくなる。すると胴体にある臓器の動きも悪くなる。
さらには、横隔膜の上下とともに広がったり力が入ったりする骨盤底筋も動かなくなる。この骨盤底筋は、クンダリーニヨガやピラティスにおいては非常に重要で、骨盤底筋がきちんと動かないと、股関節、足、身体のすべてのバランスが崩れて、ひいては、自律神経に悪影響を及ぼす。
眉間にしわが寄るだけで、全身に悪影響が広がる。筋肉が硬直し、血液やリンパ液の流れも悪くなる。交感神経が優位になり、コルチゾールや、血圧を上昇させるような状態になりやすい。
では逆に、眉間の力を抜き、目の奥をやさしくゆるめることを意識すれば、連動したすべてのシステムがゆるんでいくのではないか?私はそう考えた。そこで、眉間をゆるめることを意識するようになって初めて、いかに自分の眉間が緊張しっぱなしだったかに気が付いた。
すると、まずはわかりやすく、身体的な変化が出てきた。悩まされていた頭痛が消え、目が疲れにくくなり、肩こりも軽減、姿勢を保ちながらPC作業ができるようになってきた。スマホネックを修正して、頭の位置を正しい位置に修正することもできるようになった。
また、身体をリセットすることで、精神状態の変化にも対応しやすくなった。たとえば、眉間の力を緩め、解放状態でいるところに、他部門の人が無理難題を言ってきたとしよう。一瞬眉間の間がこわばる。すると、解放されていた状態から収縮状態に瞬時に移行したことがわかる。「あ、いま私のサバイバルモードがONになったな」ということが分かる。
それに気づきさえすれば「どうせ仕事の話なんだから、扁桃体ハイジャックをするほどのことではないだろう。むしろ、リラックスした状態のほうが、冷静でいられ、より良い解決策を論理的に導くことができる」と自分に言い聞かせることができる。結果として、眉間をゆるめる様になってからのほうが、仕事をより早く処理できるようになったと実感として感じている。
つまり、仕事や生活のなかで次から次へと訪れる「ちょっとしたトラブルや厄介な事」が来るたびに、扁桃体がハイジャックされ、それが常態化してしまうと、自分がその収縮状態にあることすら認識できなくなってしまう。何かの突破口が必要だ。その突破口が「眉間」なのだ。
大切なのは、
収縮状態と解放状態の違いを、自分の身体で、物理的かつ「からだの感覚として知る」こと。
たとえば、眉間に力が入り、呼吸が浅くなっている状態を意識してやってみる。その後、眉間や目の奥、顎をゆるめ、呼吸が自然に深くなる状態を感じてみる。
この二つの状態の違いが身体で分かるようになると、「今、自分は収縮している」「今は解放されている」ということが、感覚として認識できるようになる。
私はこの感覚を、
「解放スイッチ」あるいは「リセットスイッチ」と呼んでいる。
ストレスを感じたとき、無理にポジティブなことを考えようとするのではなく、まず眉間や顔の緊張に気づき、眉間の解放スイッチを稼働させ、身体を解放状態へ戻していく。その繰り返しによって、身体は少しずつ「収縮」が標準ではなく、「解放」を標準の状態として学習していく。「解放」された状態が常態化してはじめて、からだも、心も、そして運気も、良い方向に回り始める。
私自身、この身体のスイッチを手にしたことで、無数に頭に浮かんできた様々なネガティブな感情ーー不安、怒り、焦り、欠乏感などーーが劇的に消えた。いや、もうほとんど感じないと言ってもいい。なぜなら、それらの多くが動物としての生存本能が起こす「バグ」なのであり、それらの不安にさいなまれたところで、誰の得にもならないからだ。
身体を「解放状態」に移行させることで、ネガティブな思考が頭の中でぐるぐるするという無駄な時間が無くなり、より建設的なことに脳のキャパシティを振り分けられるようになった。
だから私は、人生を変える第一歩は、身体の収縮状態を解放状態へと転換することだと考えている。




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