人前で話すことへの緊張、その本当の理由
「人前で緊張せずに話したい」という願いを持つ人は多いですが、その裏にある根本的な動機は何でしょうか?それは「上手に話したい」ということだけでなく、「自分の思いを相手に伝えたい」「相手のためになることをしたい」という気持ちではないでしょうか。
私も以前は人前で話すことが好きで、得意でした。放送業界で働き、ニュースの現場で緊張感の中でも瞬時に判断して話すスキルを磨いてきました。むしろ、適度な緊張感はアドレナリンを生み出し、より良い結果をもたらしてくれると信じていました。
しかし、そんな私にも転機が訪れました。
突然の過呼吸とその影響
ある日、放送中に突然過呼吸に陥り、それが癖になってしまいました。緊張すると体が反応してしまう。結果的に放送の仕事を離れることになりましたが、これが子育てに集中する新しい人生のスタートにもなりました。
その後、ゼロから企業人としての仕事を始める中で、再び過呼吸の発作に悩まされました。特にコロナ禍でオンライン会議が増え、テレビカメラの前で話す状況に似た環境が私を再び緊張させたのです。元放送プロという肩書きのため、「話し慣れているはず」と思われるプレッシャーも重なり、苦しい日々が続きました。
緊張を乗り越えるために試したこと
緊張をどう乗り越えるかを模索する中で、気づいたことがありました。それは、「自分をよく見せよう」とする気持ちが緊張を生む原因だということです。他人に良く思われたい、印象づけたいという思いが強いと、肩に力が入り、体が硬直してしまいます。
具体的には、以下のような反応が起きていました:
- 緊張で筋肉がこわばり、声帯が硬くなる
- 声が強く響きすぎ、人に圧迫感を与えるトーンになる
このことに気づいたきっかけは、プレゼン練習の際に自分の声の硬さを感じたことでした。強く響く声は知的で力強く聞こえる一方で、相手を遠ざけることもあります。私はもっと柔らかく、自然体の声を出したいと感じるようになりました。
柔らかい声と自然体の話し方を見つけた瞬間
ある時、大勢の前でトークセッションを行う機会がありました。そのとき意識的に声帯を緩め、リラックスするよう心がけました。結果、柔らかい声で楽しく話すことができ、観客からも好意的な反応をもらいました。
この成功のポイントは以下の通りです:
- その場の空気を楽しむ:観客とエネルギーを共有し、「みんなで楽しみたい」という気持ちを持つこと。
- 自分をさらけ出す:良く見せようとせず、自分らしく振る舞うこと。
- 無心になる:話し方や時間配分を気にせず、今この瞬間に集中すること。
これらを意識することで、初めて「柔らかい声」と「自然体」を体現できました。
本当の自分を解放するために
振り返ると、緊張や過呼吸の原因は、自分を必要以上によく見せようとしていたことにありました。その背景には、「かっこいい自分」「完璧な自分」を作り上げようとする無意識の努力がありました。しかし、それが逆に自分の魅力や本当の力を妨げていたのです。
そこで大切なのは、「エゴを手放す」こと。自分を鎧で覆い、他人を印象づけようとする邪念を捨てると、自然にリラックスでき、本来の自分の魅力が発揮されるようになります。
結論:うまく話そうとしないことが成功の鍵
逆説的ですが、人前で話すときに一番大切なのは、「うまく話そうとしないこと」です。その代わりに、以下のポイントを意識してみてください:
- 今この瞬間を楽しむ:話す内容よりも、観客とのエネルギーの共有に集中しましょう。
- 無心になる:余計なプレッシャーや不安を手放し、自然体でいることを心がけましょう。
- 相手のために話す:自分をよく見せることよりも、相手に役立つ情報を提供することに焦点を当てましょう。
これらを実践すれば、緊張は次第に和らぎ、自然体で話せるようになります。自分の声を好きになり、観客と心を通わせる体験を楽しみましょう。
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